第1回 プロユーザー向け 小麦食べくらべ 勉強会

小麦の比較をするために同一条件でパン(チャバタ)とカステラを焼き上げ、味わい、食感、香りなどを確かめました。

  • ■開催日時:2014年11月20日(木)13:30~
  • ■開催場所:江別製粉株式会社 北の小麦 未来まき研究所(江別市緑町東4丁目2番地14号)

Lecturers

株式会社満寿屋商店
天方 慎治さん
帯広の満寿屋商店にて店舗戦略を担当しながら「十勝パンを創る会」の事務局長を担当。小麦の風味を活かすための技術向上講習を多数開催。

エグ・ヴィヴ
丹野 隆善さん
2000年に小樽市忍路に「エグ・ヴィヴ」をオープン。2013年に北海道内のパン職人「ベーカリークラブN43°」の会長に就任。札幌を中心に道内のパン文化の普及に努める。

ドルチェ ヴィータ
安孫子 政之さん
1999年札幌美しが丘に「お菓子のドルチェヴィータ」をオープン。開店以来、道産小麦をはじめとした厳選された食材を使用。札幌だけに留まらず道内外での催事へも参加している。

司会
Office YT
深江 園子さん
北海道の「畑から厨房まで」をレポートするライター。外食チェーン企業から美食レストランまで、経営と技術両サイドの取材経験から、作り手(生産者)、使い手(加工社者やシェフ)とともに行動し、本音を引き出す。スローフードフレンズ北海道会員、世界料理学会in HAKODATE 実行委員。

パン篇

  • ■テスター:天方慎司さん(満寿屋商店)
  • ■チャバタ:加水95b%、ミキサー使用(製法はベーカリーブック2014年号参照)※インプレッションはオーバーナイト仕込み、当日焼成

  • 使用した粉
小麦粉の種類 産地 原料小麦
A 麦の里えべつ/パン用粉 江別市 ホロシリコムギ
ハルユタカ
きたほなみ
B 麦の里えべつ/きたほなみ1F 江別市 きたほなみ
C HK-1(春よ恋) JA道央管内 春よ恋
D 豊春(ハルユタカ) 江別市 ハルユタカ
E キタノカオリ 芽室町 キタノカオリ

A 麦の里えべつ(パン用粉)

製パン性/

もっちりと水分を抱えつつも弾力があり、捏ね上がりがぷるっと腰高。
その点から、チャバタのようなパンよりは、食パンやテーブルロール(ソフト生地)に向く印象。一等粉との実用的な優位差は感じられなかった。ロデヴ(ミキシングをのばして加水する)ができそうな感触がある)、またブリオシュなども後から加水する生地であり、この品種に向くかもしれない。

食味/

全体にしっとり、口どけよい、パサつかない。
薄力系粉と比べると、ややモチモチ感が出る。

B 麦の里えべつ(きたほなみベース)

製パン性/

生地のつながりというより、まとまり(グルテンが出きらないうちから、生地がまとまりはじめる感覚)がある。生地自体は弱く、ボリュームが出にくいのが弱点だが、味のベースとなる中種に(春よ恋)など風味のしっかりした品種を使うならば、種の粉の風味を生かすためにはきたほなみ、という使い分けをしてもよいだろう。

食味/

損傷でんぷんの少なさによって色づきは落ちるが、食味はよい。

C 春よ恋(HK-1/JA道央管内)

製パン性/

本来は独特のもっちり感、目が詰まり、ホイロでプリッと持ち上がり、腰高のチャバタになる傾向。ミキシングしたときの道産小麦独特の匂いを感じる。

食味/

強烈な個性はないが、北海道が食べ慣れてきた「道産小麦」の代表的な風味かもしれない。量的にも春小麦のエースでもあるし、流通量も多い。
※釜の出し入れが多く焼成条件が悪かった。焼き上がりにハンディあり。

D はるゆたか(豊春/江別産)

製パン性/

5年前に試作経験あり。吸水性が低いイメージが大きい。
特に手ごねでは入りづらい。独特なピンクを帯びた捏ねあがりの色が特徴。

食味/

独特のあまい香り。

E キタノカオリ(芽室産)

製パン性/

吸水率の高い品種。今回の配合は、加水がキタノカオリ本来の吸水率より少なめだったため、捏ねあがりは固めになった。これはチャバタには成形しやすく有利。キタノカオリはストレートで水分が多く入る一方で、こねた後に加水をすると水分が浮きがち(吸水しにくい)。

食味/

独特の黄色味の強い生地、本来麩質は固めだが、年々、薄焼きせんべいのようなパリンとした硬さが顕著。(単品種でやれるかは別として)薄くパリッとしたクラストを楽しむパン(テーブルロールやカイザー等)が合う印象。

座談メモ

天方氏:

グルテンの「質」のデータ化が進んでおり、これが製パン時のフィーリングや焼き上がりに大きく影響することが知られてきた。グルテンサブユニット(遺伝的にグルテンの強さを決める因子)が解明され、ゆめちから=強、きたほなみ=中というように、タンパクの量だけでなく質で選ぶようになった。

丹野氏:

粉のスペックの安定性は重要。自店では導入まで1年は使う。季節によっても変動するもの。粉だけではなく、作付面積に応じたブレンド粉など、単一種にこだわらずに試してみるのも興味深い。

菓子篇

  • ■テスター:安孫子政之氏(札幌市清田区 お菓子のドルチェ・ヴィータ)

  • 使用した粉
小麦粉の種類 産地 原料小麦
A 麦の里えべつ/パン用粉 江別市 ハルユタカ
ホロシリコムギ
きたほなみ
B 麦の里えべつ/きたほなみ1F 江別市 きたほなみ
C HK-1(春よ恋) JA道央管内 春よ恋
D 豊春(ハルユタカ) 江別市 ハルユタカ
E キタノカオリ 芽室町 キタノカオリ
F 宝笠(ドゥノール) 北海道 きたほなみ
  • カステラ配合
  • メレンゲの段階で同一比重38%を確認後、粉を合わせた卵白1400、
    上白糖1,850、卵1,080、粉950、スキムミルク250、米あめ350、
    はちみつ175、水175、生クリーム400※すべて前日に焼成して試食

A 麦の里えべつ(パン用粉)

作業性/

ミキシングするわけではないので、粉自体がくっつかない、さっと広がる性質が、起泡した液体に混ざる感覚が良い。合わせる際にグルテンを生成させないことがポイント。粉を合わせる混ぜ時間も関与するので、さっくり合わせるとよいだろう。

食味/

全体にしっとり、口どけよい、パサつかない。薄力系粉と比べると、ややモチモチ感が出る。

B 麦の里えべつ(きたほなみベース)

作業性/

Aと比重もほぼ同じ。しっかり混ぜる生地には良いという判断も可。
しかし薄力ではないから、主要粉としてはまだ疑問が残る。

食味/

焼き上がりにモチモチ感がない。しかし、意外に口どけ感やしっとりとした感じがなかった。「きたほなみ」特有の「モチ感」のようなフィーリングは、菓子用粉としてはあまり適さない印象。

C 春よ恋(HK-1/JA道央管内)

作業性/

A・B同様。比重もほぼ同じ。端的に言えばこれといった特徴がない。
独特な香りやしっとり感も感じられなかった。

食味/

質感の観点から言えば、強力系の粉(はるゆたか、春よ恋)で焼くのも考えられる。
「きたほなみ」が中力系と強力系の間のポジショニングであれば、これをブレンドベースとし、そこに味わいの良い粉を選んでブレンドする方法も一考したい。

D はるゆたか(豊春/江別産)

製パン性/

A~C同様。比重もほぼ同じで、調整に手間がかからない。

食味/

独特の旨みと香り、しっとりした弾力。使い慣れていることもあるが、菓子用粉のスペックでなくとも、十分菓子に使える。
課題があるとすれば、他品種よりも高い水準の価格が考えられる。

E キタノカオリ(芽室産)

作業性/

泡切り前から(ミキシング後に粉を入れた段階で)生地が沈んでいき、最終比重が極端に重くなっていた。唯一、他よりボリュームが出なかった。

食味/

パサついていた。団子状にはならないが、口どけが良くない。
粉が、卵と生クリームの水分を一気に吸い込んでしまったことが要因だと考えられる。
「粉によって給水スピードが違う」ということが端的にわかるケースだと言える。
吸水時間をコントロールすれば、グルテン生成のピークも変化することが考えられる。

F 宝笠 ドゥノール(きたほなみ)

製パン性/

カステラ向けの粉なので、特に問題はない。

食味/

焼き上がりの生地の目がきれいに揃う、しっとり感もあるしボリュームも出る、と3拍子そろっている。しかし、口の中で噛んで味わいが広がるかといえば、道産小麦と比べてバランスが良いが特徴は若干物足りない印象。
味だけでいけば、ドルチェなどに向いていると考えられる。品種の特性というより製粉(ブレンド)技術が色濃い。
安定してボリュームを出したいお菓子(カステラ)には必要な粉だと思われる。

安孫子さん感想

  • ■ふくらみ
優れている
【F】宝笠
良い
【B】麦の里えべつ(きたほなみ)
普通
【D】はるゆたか
少ない
【C】春よ恋【A】麦の里えべつ
あまりない
【E】キタノカオリ
  • ■風味
優れている
【D】はるゆたか
普通
【A】麦の里えべつ(パン用粉)
【B】麦の里えべつ(きたほなみ)
【C】春よ恋(HK-1)
【E】キタノカオリ
【F】宝笠
  • ■口どけ
優れている
【F】宝笠
普通
【A】麦の里えべつ(パン用粉)
【B】麦の里えべつ(きたほなみ)
【C】春よ恋(HK-1)
【D】はるゆたか
少ない
【E】キタノカオリ
  • ■気泡の均一性:特に差はない